その難しいテーマから映像化不可能と言われた作家・打海文三氏による傑作ミステリー小説を映画化した『時には懺悔を』(8月28日全国公開)。その完成披露試写会が7月29日にTOHOシネマズ日比谷にて実施され、主演の西島秀俊、共演の黒木華、宮藤官九郎、柴咲コウ、片岡鶴太郎、そして中島哲也監督、さらに特別ゲストとしてスペシャルニーズスーパーバイザーの安田一貴氏が参加した。

満員御礼で迎えたこの日、9年前の誘拐事件の真相へと迫る探偵・佐竹三雄を演じた西島は「この度は熊本地震でお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみを申し上げます。そして被害に遭われた皆様に心からお見舞い申し上げます」と昨日起こった令和8年熊本地震の被災地に心を寄せながら「撮影中は素晴らしいキャストの皆さん、それからスペシャルニーズを持つ子供たちと毎日とにかく魂を込めて撮影をしていました。こうして完成して皆さんに観ていただけることがとても嬉しいです」などと柔和な笑みで挨拶した。

一方、自身を巡るハラスメント報道に触れて中島監督は「私事で映画の上映が伸びて、この映画の完成と上映を楽しみに待っていらしたお客様に迷惑をかけたことを心からお詫びいたします。申し訳御座いませんでした」と深々と頭を下げて謝罪し「今日はこれだけ多くの方々に観ていただけるという事で、信じられないくらい嬉しいです」と来場に感謝した。また、およそ18年の構想を経て完成にこぎつけた事に「原作に出会った当時は、障がい児の方に出ていただくこのような映画など不可能だと否定されました。それがこの時代になってやるべきだという事で、映画化に向かってちょっとずつ進んでいきました。僕一人ではなく、色々な人たちの想いが映画を完成させたと思います。俳優さんもスタッフも魂を込めて演じ、撮影しております」と述べた。
中島組初参加の西島は、本作の脚本に惚れ込んだといい「自分が今まであまり触れる事のなかったスペシャルニーズを持つ子供たちとそのご家族の切実な思いが丁寧かつリアルに描かれていた。その先に世界や人に対しての希望があるという素、晴らしい脚本でした」と参加した理由を口にした。

とある映像をきっかけに悪徳探偵・米本(佐藤二朗)に調査を依頼した主婦・尋津民恵役の黒木は「自分だったらどうするのだろう?という事を本当に毎日考えながら演じていました」と熱演を予告。『来る』以来約8年ぶりの中島組参加となったが「中島さんとまたご一緒できる事もそうですし、『来る』の時に演出していただいた時間が自分の中で芝居の事を考えるきっかけになったので」と再会を喜んでいた。

重い障がいのある息子・新(しんすけ)を一人で育てる明野哲夫役の宮藤は、介護の講習をしっかりと受けてから撮影に臨んだといい、スペシャルニーズの俳優たちとの共演をこう振り返った。「彼らは本当に良い表情や素敵な笑顔を見せてくれて、本番に強い!その良い芝居を僕が台無しにしてしまうのではないかと思った。慎重にやろうとするけれど、彼らの良い表情に釣られて僕も良い人の顔になってしまうから…」と哲夫のがさつさを表すのに苦労した様子だった。

離れて暮らす佐竹の妻・佐竹由紀役の柴咲は「内に秘めるタイプ」と役柄を紹介しながら「私は何でも感情を表に出すタイプだと思われがちですが、意外と内に秘めるタイプ。本当に言いたい事は言えていなかったりするので、そこは自分と同じだなと思いながら演じていました」と共感。佐竹との夫婦像について「心の奥に秘めたものがありながら、壊してはいけない今というものがある」と表しながら「それ以上踏み込めないもどかしさを毎回毎回感じながら、伝わってくるものがあったので、傍らでそれを受け止めてお返ししていた」と西島との演技のキャッチボールを回想した。これに西島も「触れる、というのが本作の大きなモチーフ」と明かし「家族関係の中で触れるシーンは距離感が難しくて、柴咲さんと監督と相談しながら探っていった。それが大きな助けになり、充実したシーンになりました」と撮影を振り返った。