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池松壮亮、憧れの原作者へ直談判で映画化「俳優が出すぎた真似かなと」

日本映画界屈指の鬼才・石井裕也監督が、技術が発展し続けるデジタル化社会の功罪を鋭く描写した映画『本心』(11月8日公開)。10月21日には都内で主演の池松壮亮と原作者の平野啓一郎を招いたスペシャル対談イベントが行われた。

書店員を対象に行われた試写会後に登壇した池松と平野。リアル・アバターとして働きながら、急逝した母の本心を知るために、AI技術を駆使して母を蘇らせてしまう青年・石川朔也を演じた池松は原作について「コロナは描かれていないけれど、すでにアフターコロナが描かれていた。そこに衝撃を受けました。今ある様々な社会問題が拡張した世界を彷徨いながらも他者に自分を見出して、揺らぎながら実感を手放さないように生きる朔也に魅了されました」と魅力を口にした。

一方、平野は原作誕生の背景について「自分が高齢者になる時代を考えた時に、自分はいつまで生きられるのだろうかと思いながら生きるのは嫌だと思った。生きる事を肯定的に捉えられる社会がいいと思って、子供たち世代が社会の中心になる時代を考えた。それが未来を舞台にした理由で、当初はAIと人間の共存を肯定的に描こうとしたが、やはりAIと人間は同じではないので、最初の構想とは違う物語になった」と語った。

石井監督やプロデューサーと共に、平野のもとへ映画化への直談判に参加したという池松。「俳優が出すぎた真似かなと思いつつ、映画化の一つの説得材料になればいいかなと思ったし、単純にファンだったので平野さんに会いたいという気持ちもあった」と笑いつつ「自分の気持ちを伝えたかった」という強い想いがあったと回想。これに平野は「俳優の方が映画化したいとわざわざ会いに来てくれるのは珍しく、池松さんの映画に対して持つ真面目な考えと映画化を実行しようとする意欲に心打たれた。池松さんの映画に対する真摯な態度と、ピュアな心を持つ朔也はどこか響き合うものがある気がした」と快諾した理由を述べていた。

また平野は池松について「映像でヴァーチャルな存在と生身の存在の区別がつくのか不安だったけれど、池松さんが汗をかいて生々しい肉体で演じてくれたことで、ヴァーチャル・フィギュアの母親との対比が色濃く表れたと思う。池松さんのお陰で肉体を持った存在としての人間が、映画として強調されたのが素晴らしかった」と賞嘆。池松は母との別れのシーンの撮影に触れて「平野さんが現場に遊びに来てくれて、なぜここで来るのだろかと…。母との再会で緊張している中で平野さんに見られるんだと思いながら…」と苦笑いするも「僕自身15歳の頃に亡くなった大好きだったおじいちゃんと頭の中でいまだに何度も再会している中で、テクノロジーが死者との境界線を曖昧にしている怖さと、再会できる喜びという複雑な感情がありました」と撮影時の心境を明かしていた。

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