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【新春インタビュー】期待の20歳・吉田美月喜が北海道民を泣かせた…『カムイのうた』を通して学んだ差別を生む構造

先行上映中の北海道では「幸惠さんの魂がより深く迫ってきて泣いた」「様々な観点が融合された素晴らしい映画」「間違いなく超良作で名作」「強い思いに圧倒」「息をのむ自然の美しさ」との声。アイヌ民族の壮絶な歴史を描く映画『カムイのうた』が、1月26日から全国公開される。差別を受けながらも命を懸けて『アイヌ神謡集』を後世に残した知里幸惠さんをモデルにした北里テルを演じたのが、俳優の吉田美月喜(20)。新春インタビューとして、期待のニューカマーが本作に対する心境を語る。

■抑え込みすぎて爆発できなかった感情

Q:どのようなお気持ちで北里テルを演じられましたか?

オーディションで北里テル役に決まって菅原浩志監督と改めてお話をした際に、菅原監督の本作にかける想いと責任を強く感じて、普段以上の真剣さを持って取り組まなければいけない作品だと襟を正しました。私にとっては初の時代ものでもあり、学校で習ったことはあるけれどアイヌ文化に関する知識はほぼありませんでした。この作品をやるためにはしっかりと知識を増やさないと、観客の皆さん、そしてアイヌの方々に失礼に当たると思い、歴史的背景をかなり調べました。北海道で行われた製作発表会見の際にはアイヌをテーマとしたナショナルセンター・ウポポイや知里幸惠 銀のしずく記念館を訪れて様々なことを学びました。ここまで自分で調べ物をして役作りするという経験は初めてのことで、ノートはメモ書きでいっぱいに(笑)。今振り返っても貴重な時間だったと実感します。

Q:テルがアイヌ民族であるというだけで差別される描写には胸が痛みました…。

アイヌ民族というだけでいわれなき差別を受けるテル。必死に勉強してアイヌ民族として初めて女子職業学校に入学したのに…。あまりにも酷い仕打ちの数々に私自身も悔しさを覚えました。テルが初めて自分の胸の内に抱く悔しさ悲しさを爆発させるシーンは、演じるのが凄く難しかったです。というのもテルは「……」が多い子で、表情で見せる芝居がほとんどだったからです。それまで感情を抑え込む演技をしていたので、いざ感情を爆発させるとなった時に「あれ…?」と。抱え込んだ憤りをどう爆発させればいいのかわからなくなってしまいました。セリフを強く言っても、どうも薄っぺらいような気がして…。自分の演技に納得がいかずテイクを重ねました。このような経験は今までなかったことなので「どうした?どうした?」と内心焦りました。

■奥深い民族楽器ムックリ初挑戦

Q:雪原の中、薪を担いで歩くシーンは撮影の過酷さが伝わります。

北海道の冬は初体験で、しかも撮影が行われたのが寒波の時期。東京の冬とは比べ物にならないくらい寒くて、体中がカッチカチになりました。袴の下に防寒着を着込み、防水靴下を履いていましたが足先も顔も耳も真っ赤。息を吸うと痛いくらいだったので自然と呼吸は浅くなり、皮膚の感覚もなくなりました。だからこそリアルな息遣い、リアルな耳の赤さなどが画に捉えられたと思っています。完成した作品を観て、改めてリアルに勝るものはないと実感しました。ちなみに暖をとるために用意していただいた焚火に当たるにしても、足の感覚がなくなり過ぎて靴下が焦げるというハプニングもありました(笑)。

Q:アイヌ民族の楽器、ムックリの演奏にも挑戦されましたね!

ムックリは撮影開始の約2か月前から練習を重ねました。ムックリの難しいところは楽譜も無ければ、音に正解がないという点です。演技をしながら演奏する上では様々な音の引き出しを持っていなければダメだと思い、基本的な音を鳴らせるようになった後は高音や低音の音色を探るように練習しました。大きな音を出したいときは息を思い切り吐いたりして、口の開き方や喉の開き方によっても音階が変化していきます。撮影後に行われた本作のトークショーの際にムックリを演奏させていただきましたが、撮影のためにあれだけ練習してきたのに知らない音が急に出てビックリ!ムックリは奥が深く無限大の可能性ある不思議な楽器です。

■先行公開の北海道民も涙

Q:北海道ロケのご感想は?

撮影中は北海道の東川町に滞在して夏のシーズンと冬のシーズンを楽しく過ごさせてもらいました。夏は過ごしやすくて景色も綺麗。滞在先の近くのスーパーで買ったジャガイモが美味しすぎて、大量にストックしました。札幌に行った際は初めて食べたスープカレーの美味しさに感動。思い出が食べ物ばかりで恥ずかしいですが…。ちなみに本作で使用されている野生動物や自然の映像は実際にカメラマンの上野彰吾さんが現地で撮影したものだそうです。ここまで美しい自然が日本に現存しているという事実に驚きと感動があります。

Q:北海道での先行公開も大盛況とか。

北海道の数か所の映画館で実施した舞台挨拶では、観客の多くの方々が目頭を押さえながら私たちのことを迎え入れてくださいました。聞くところによるとアイヌ民族の血を引かれている方も多かったそうです。これまで私が経験した作品の舞台挨拶は、楽しんで観てくれるという印象ですが、今回の作品の舞台挨拶はそれとは違う、一種の真剣さのようなものを感じました。観客の皆さんの眼差しを見て、この映画の存在する意味やメッセージの強さに改めて気づかされました。同時に安心感もありました。というのも実際に公開されるまでは、この映画を受け入れてくれるだろうか?という不安があったからです。認めてくださる皆さんの反応を直に見ることが出来てホッとしました(笑)。

■2024年は二十歳LAST YEAR

Q:本作を通して吉田さんは、差別を生む構造についてどのようなことを学びましたか?

劇中の校長先生(伊藤洋三郎)のセリフにある「差別とは無知が生んだ偏見だ」と言うのは、まさしくその通りだと思いました。テルの幼少期のシーンで頬から流れる赤い血を見て大人が「同じ赤い血か」と言い放つ言葉には、まさに無知の恐ろしさが表されています。私もこの映画に関わる前はアイヌ文化や差別の歴史を知りませんでしたが、知ることによって歩み寄れることがあると実感しました。差別をなくす、というのは簡単なことではなく難しさもあると思います。でも解決の第一歩として必要なのは知ることであり、知ろうとして歩み寄ることです。「まずは知ってみようよ」。『カムイのうた』を通して私はそう学びました。

Q:昨年2023年は20歳の年でもありましたね!心境の変化は?

周りからも「二十歳だね、大人だね」と言われますが、私自身は何も変わっていないというか、「何か変わったか?自分」という感じです。だから今は「大人にならねば!」という焦りを感じているところです(笑)。そんな自分のスキルを高めるべく、新しく習い事を始めることにしました。どんな習い事なのか?それは上手くなってから発表します!今後の俳優人生に関わってくることでもあって、今までに仕事でそれをやることはありました。もっとこのスキルを上げたい!と思うところがあり、習うことに決めました。しばらくして私のプロフィールの特技欄に新たな特技が追加されていたら「これのことね!」と思っていただけたら幸いです。是非見守ってください!s

▶吉田美月喜さん
2003年3月10日生まれ、東京都出身。スターダストプロモーション。
Instagram:(@mizukiyoshida_official)

『カムイのうた』
配給:トリプルアップ
Cシネボイス


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