2022年4月、東京都多摩市・唐木田の人気ラーメン店「峰来軒」が閉店しました。行列のできるお店として知られ、多くの人に惜しまれました。このお店を店主のご家族からの依頼で精巧なジオラマにした、情景師アラーキー(@arakichi1969)さんの2023年6月1日付のTwitter投稿が話題になっています。
情景師アラーキーさんは「両親の大事な店をジオラマ化して記録として残したいという息子さんからの依頼を受けて制作していました。店はなくなってもいつまでも店主のリビングで営業を続けるジオラマの店」などとツイートしており、ありし日の「峰来軒」そっくりそのままのジオラマ写真を公開しています。
息子さんの熱い思いに打たれて制作を決意
普段、情景師アラーキーさんは企業広告やイベント、博物館展示などのためのジオラマを制作するお仕事をされていて、個人からの依頼は、制作費が高額になることもあって受けていないのだそうです。
今回、依頼を特別に受けた理由を尋ねると、「なぜジオラマを創りたいのか、その値段に見合う理由があるのかは大きな問題になってきます。メールでやり取りを重ねて(息子さんの)熱い思いに共感し、制作することになりました」と明かしてくれました。
ジオラマ制作は「探偵のよう」
お店を実際に訪れる機会はなかったものの、情景師アラーキーさんは「必要な写真はご家族にお願いして撮影してもらいました。また食べログ等の書き込みでこの店が愛されていたことは十分に分かりました」とのこと。
また、実物の建物を再現するジオラマ制作の苦労として「私の元に依頼が来る場合、白黒写真一枚しかないような依頼も多々あり、そこから図面を起こしたり、色を推測したりします。ジオラマは立体物なので見えない部分の詳細を探る工程はまるで探偵のようです」と話してくれました。
「心に何かを灯すこと」が仕事
最後に、情景師アラーキーさんにジオラマへの思いを語ってもらいました。
「ジオラマは、写真、イラスト、CGとは異なり、小さく凝縮された世界ゆえに、記憶のスイッチが入りやすく思い出を喚起させる最適なモノだと思っています。ジオラマを和訳した『情景』という言葉は『ある景色を見て心に喚起させる思い』とあります。よくできたジオラマそのものより、それを見ることで心に何かを灯すことが私の仕事だと思っています」
取材協力者:https://twitter.com/arakichi1969
Twitterアカウント名:情景師アラーキー