2023年11月7日に正式オープンしたオンラインのデザインショップ「oh」。元インテリアショップバイヤーとコンセプターという二人が店主を務めるプロダクトデザインショップです。
ショップを覗いてみると、厳選されたアイテムが並び、商品紹介やブログも読み応えがあって、まるで実際に店主の方と会話をしながら買い物をしているよう。これはお話を聞いてみたい!というわけで今回は、こだわりが詰まったショップやプロダクトのあれこれについて、果ては買い物という行動そのものについて……(!)店主の村上博さん・和田健司さんに伺いました。
「oh」を合言葉に
――まず、「oh」という店名がつけられた流れや由来について伺いたいです。
和田健司さん(以下、敬称略) 「oh」という言葉は、「おおっ」とか、「おお~」とか、誰でも使う感嘆詞なわけですが、他の国の言葉でも”oh”とか言ったりするなと。だから、世界共通の同じ言葉で、ニュアンスは違うにしろ、同じ意味を持つような言葉というのがすごくいいなと思ったんです。微笑んだり、驚いたりというところを一つのきっかけとして、合言葉にして、お店を作ったらいいんじゃないかと考えました。
――「oh」のオンラインショップは商品のストーリーテリングにとても力を入れていますよね。実際に手に取っているように買い物ができるサイトにしようと思った背景は?
村上博さん(以下、敬称略) 僕はECサイトを15、6年担当してきたわけですが、顔は見えないけれどその先には必ず人がいて、それって店頭でお客さんに接客するのと同じだよねってずっと思っていたんです。単に素材がどうとか、機能がどうということだけでは、実物が触れないオンラインショップなのに伝わらないでしょってことを昔から思っていた。その気持ちが今のサイトのコンテンツに繋がっています。
――サイトを見ていて、オリジナル製品の「あのスプーン」がとても気になりました。個人的に金属のスプーンと食器がカチカチ当たる音が苦手なので……そういった方にも人気が出そうな製品だなと思います。見た目もおしゃれで。
村上 まさに。僕もそう思います。食器に優しいスプーンなんです。あと、幅が狭いのも食べやすくて良い。
和田 「食器に優しい」とか考えられるなんて心が優しいんですよ。
村上 (笑)
――オリジナル製品の中で、これはこういうシチュエーションで使うのが好き、というエピソードはありますか。
和田 「あのスプーン」だと、食洗器に入れた状態とか好きですね。オンの時じゃなくてオフの時の顔って言うんですかね。もちろん、使っている時も使いやすくて、鍋の時とかこのスプーンだとすごく食べやすいんですよ。あとはちょっとした丼ものとか、最初は箸でスタートするんですけど、途中から「ああもう、スプーン!」みたいな(笑)そういう時にあの匙は箸に比較的近いというか。大きいスプーンだといきなり大口開けて食べなきゃいけないですけど、「あのスプーン」は箸に近い使い方ができるスプーンなんですね。
――使っていないときも、いいなって思えるんですね。
和田 特にお箸とかスプーンって、食べる瞬間、口に入れる瞬間っていうのは、視界から消えているんですよ。その時に、「あ、細い」とか「食べやすい」って印象を持つのは、見ながら思っているわけではないので、それは使っていて感覚的に心地よく感じているわけですよね。
逆に使っていないとき、オフの時というのは、その製品のフォルムとかシルエットが全部見えているので、どちらかというと目で見て楽しいと感じます。お気に入りのカトラリースタンドに揃って入っている様子とかは、ああ選んでよかったなとか、妥協しなくてよかった、巡り合ったぞこれ!って、そういう感覚があるかもしれないですね。
村上 僕も同じで、マグとかも、使っていないときって普通収納しちゃうと思うんですけど、仕舞わないで置いておきたい、そこに置いてあるときの見え方が好きっていうのはあります。すごくいい気持ちになりますね。そういう視点は全部の商品にあるかと思います。
コミュニケーションの大切さ
――レビューにも全て返信されていますが、商品を購入した方から寄せられた声は率直にいかがですか?
村上 やっぱり、「oh」って実際に言ったかどうかはわからないんですけど、「毎日使うたびに感動します」とか、「いい気持ちになります」って言われると、「ああ、それを味わってほしかった」って気持ちになります。レビューに関しても、オンラインだからと言って、一方通行になるのはあんまり好きじゃないんです。お客さんが反応してくれたら、こちらももう一度反応するというのは、今後もやっていきたいなと思っています。
和田 僕も読んでいて全部嬉しいですね。本当は銭湯の番頭さんみたいにずっと座っていたいんです。「毎週月曜日は座っています。何かあったら聞いてください」みたいな。なかなかネットだと聞けないですけど、気持ち的にはそういう感じです。だから使ってどうだったかって声を聞くと、「それわかります」とか、同じ趣味を持つ人間として、友達のように話したい、というのはありますね。
この時代にモノを売るということ、買うということ
――オンラインショップを通じて、今後どういった体験を発信していきたいとお考えですか?
和田 今の時代、通販って買えるものがありすぎて、僕たちは自分がどういう量のものから何を選んで買っているかがわかっていないような気がします。路面店だったら、大体の物量の把握はできますが、通販だとそれが難しい。そうすると、もっといいものがあるかもしれないって気持ちが一向に消えないんですね。そういう時代において、通販で買うってどういうことなんだろうという問いに対する一つの提案として、「oh」をやっています。買うまでに要した時間とか、買わなかったとか、迷うとか、そういう時間も含めて買い物だと思うんです。それが物を自分の人生に入れるという事なのかなと。本当は各商品に一冊ずつ本を付けたいんですよ。僕たちだけではなく色んな使った人のストーリーがそこに載っていて、それを読んでから「よし使うぞ」って使い始めると、全然違うと思うんですよね。でも、現実的には難しいので……ゆくゆくはそうなったらいいと思っています。
「ずっと使っていて、良いものなので、あなたにもどうぞ」
――最後になりますが、お二人にとって良いプロダクトとはどんなものでしょうか?また、今後発売予定の商品がありましたら教えてください。
村上 年齢とか性別関係なく、見ただけでうきうきして、使うたびに「うんうん」ってなるものですね。それで作っている人も売っている僕らも、使う人も、みんな幸せになるもの。なかなか難しいかもしれないですけどね。例えば値段を落とすためにすごくたくさん作ったり、交渉して安くさせたり、そりゃあ消費者は嬉しいかもしれないですけど、一方で泣く人もいますよね。それは違うんじゃないかって思うんです。そういうものじゃなくて、ちゃんといいものにはそれなりの対価を払って、みんながハッピーになるというのが良いプロダクトなんじゃないかと思います。
和田 実は来年に向けて、新しい考え方に基づいたタオルを開発しています。タオルって、すごくふかふかでよく吸うじゃないですか。その水でどっしり重くなったのを洗濯機に入れて、大量の水と洗剤で洗濯機ぐるぐる回して、乾燥までやって3時間くらい、っていうのを毎日のように続けていて。どれだけここに労力を費やしているのだろうと、もっと楽にならないのかなと思いながら過ごしてきました。それに対する答えを出したので、それに対する答えを出したので、今回「oh」オリジナルで開発を進めています。村上さんが言ったように、苦しんで作らせて安く売る、みたいなことはやりたくないので、やっぱりみんなが幸せになれるように作るのはどうしても時間がかかります。もうすぐ発売する予定の「あのボウル」も、きっかけとなったボウルと出会ってから発売まで、5年くらいかかっているんですよね。早く作ろうと思えばどこかで妥協してしまえばいいわけで、でもそうすると長く使えないものになっちゃったりして、結局、消費者が泣くことになる。そうやって考えると、良いプロダクトを作ることは、時間がかかるものだと僕は思いますね。
村上 タオルは毎日使うものなので、今回の新しいタオルも期待しています。今も試作品を毎日使っているので、早く皆さんにも伝えたいなって気持ちがありますね。
和田 僕たちは取り扱っている商品を本当に毎日使っているので。そういう意味では「先に使った人が売っている店」みたいなわかりやすさがあると思います。うんちくとかではなくて、「ずっと使っていて、良いものなので、あなたにもどうぞ」みたいな感じですね。
======
お二人のお話を伺う中で、買い物をするということは自分の人生にモノを取り入れるということである、という事実に改めて気づかされました。普段、買うモノの背景を知る機会はなかなかありませんが、お二人のこだわりを聞いて、毎日使っている物ともっと真剣に向き合いたい!という気持ちが芽生えました。クリック一つで何でも買えて、使えなくなったら捨てて買い替える、それが当たり前となっている時代ですが、良いものと長く付き合っていくために、たくさん悩んで、時間をかけて買い物がしたいですね。これから発売される商品も楽しみです!
選りすぐりの商品を、たくさんの情熱とともに提案しているデザインショップ「oh」、皆さんも是非覗いてみてはいかがでしょうか。
▶ショップ概要
デザインショップ「oh」
https://www.o-h.jp/